2006-07-13
しばらく経つと
力尽きた姥桜を癒すように
跡形もなく消えた蔵の跡地には
草が生い茂っている
あれから父親は
普通の人に戻ってしまい
別の意味で
僕の視界から遠ざかっていた
そんな
平穏な日常にとまどいつつも
慣れながら僕は
十九歳になった
別に十九歳が特別という訳じゃない
ただ
彼女はいつまでも十九歳のまま
飛翔の夢を見続けている
ただそれだけ
ある日
草むらの陰にひっそりと
桜の花びらが一枚
春を隠しているのに気づいた
僕には飛翔の夢を夢見るなんて
できないと思っていたが
どうやらそうでもないらしい
だから
花びらを握り締めて
僕はしゃがんで
いつでも飛べるように
力を溜めて
あとは風が来るのを待つだけ
あとは風が来るのを待つだけ
製作:2002年2月20日
分類:連作「『飛翔の夢』の後」の3
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